小規模事業者持続化補助金の申請には、注意すべき点が多数あります。この記事では、公募要領に記載された「注意事項」を一つひとつ、わかりやすく解説していきます。見落としがちな点も多いので、申請前に必ず確認していきましょう。
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第 17 回公募 公募要領(暫定版)
❗注意1:審査があり、不採択となることがあります
この補助金は応募すれば必ずもらえるものではありません。申請内容は事務局によって審査され、内容次第では不採択(=落選)」となることがあります。
実際に、令和6年(2024年)5月27日に締切られた「第16回公募分」では、申請件数7,371件のうち採択されたのは2,741件(採択率は約37.2%)にとどまりました。
❗注意2:補助金額が減額、または全額対象外となる場合もあります
補助事業実施期限までに支払いと事業の遂行が完了したもののみが補助金の対象となります。
また実際に支払われる補助金の金額は、交付決定を受けた補助事業者が、事業完了後に提出する実績報告書などの審査を経て、最終的に決定されます。
この審査の段階で、交付決定されている「事業計画と異なる内容の事業を行っている」、「事業計画と異なる経費支出を行っている」と判断された場合は、その部分は「補助対象外」とされ、金額が減額されることもあります。
小規模事業者持続化補助金<一般型> 第16回公募「よくある質問」には、経費についてのQ&Aが多くあります。以下、経費申請で注意する点を抜粋しますが、詳しくは公募要領や今回のQ&A、商工会・商工会議所にお問い合わせください。
たとえば以下のようなケースが該当します:
- 「〇〇一式」「〇〇等」などの表記は、その経費の具体的な内容が特定できないため、補助対象経費として認められない場合がある(Q3-21)
- 汎用性のある物品(パソコン、プリンター等)を目的外で使用する恐れがある機械装置等経費は補助対象とならない可能性がある(Q3-7)
- 中古品で見積もりが1社しか取れていない場合は、補助対象外となる(Q3-24)
- 個人からの購入は補助対象外となる(Q3-25)
- 老朽化による単なる買替えや取替えなど、現在の同程度の性能の設備導入などの機械装置等費は補助対象外となる(Q3-23)
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型> 第16回公募「よくある質問」より
対象となる経費の条件をよく確認したうえで、明確かつ正確な内容で申請することが重要となります。
❗注意3:補助金は後払い、自己負担が必要
補助金は前払いではなく、後払い(精算払い)です。
まずは自己資金などで補助事業を実施し、事業完了後に報告書類を提出し、審査・確定ののちに補助金が振り込まれます。
なお、申請締切から採択結果が出るまで2〜3か月程度かかるとされており(※第16回公募「よくある質問」より)、補助金の入金までに数か月を要することもあります。
❗注意4:事業者「自ら」が検討していない場合は不採択・交付取消となることも
この補助金は、小規模事業者自身が自社の経営を見直し、課題を整理し、計画を立てたうえで販路開拓に取り組むことを支援する制度です。
そのため、申請内容に事業者自身が検討した形跡がない場合や、後から他人任せであったことが発覚した場合には、審査の評価に関係なく不採択や交付取消となる可能性があります。
実際、類似制度である「事業再構築補助金」では、同一端末による複数代理申請が発覚し、申請者に個別に事情を確認する対応が取られたという公表事例もあります(2023年12月15日 事業再構築補助金HPより)。
2023.12.15 ご案内 第11回公募代理申請について
公募要領に記載があるとおり、本補助金は事業計画書を事業者自身にて作成、申請していただく必要があり、代理申請については公募要領に反する行為として採択取消等の対応をさせていただく恐れがあります。
第11回公募の申請案件についてアクセス解析を行った結果、複数の案件が同一端末を用いて申請されている可能性があることが判明しました。
該当する事業者様には個別にメールを差し上げご事情を伺いますので、どのような状況で申請を行ったのか、メールへのご返信を以て確認させていただきます。
採否につきましてはご返信の内容を踏まえ、公募要領に記載があるとおり外部有識者からなる審査委員会が評価し決定いたします。
ご返信いただいたメールの内容次第で即座に採否を決めるものではございませんので、予めご認識おきください。
また、インターネットやSNSにて取り上げられておりますが、事前の準備が不十分で既に複数の事業者様に上記方針と異なる案内を行ったことにつきましては、併せてお詫び申し上げます。
事業再構築補助金HPより(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/news.html)
❗注意5:高額なアドバイス料金を請求する業者に注意
補助金の申請にあたっては、専門家や外部業者からアドバイスを受けることも可能ですが、サービス内容と釣り合わない「高額な料金」を請求する業者も存在するようです。
なお、コンサルティング費用やアドバイス費用は、すべてが補助対象になるわけではありません。たとえば「インボイス制度への対応」「事業遂行のために必要と認められた相談(税理士・診断士など)」といった一定の条件を満たす場合に限り、補助対象経費として認められる可能性があります(※第16回公募「よくある質問」より)。
支援を受ける際は、契約内容・金額・補助対象性を必ず事前に確認し、また商工会・商工会議所への相談なども活用すると良さそうです。
❗注意6:第三者から支援を受けた場合は、様式2に正しく記載しないと虚偽報告とされます
第三者の支援( 支援 料金の支払いの有無に関わらず) を受けているにも関わらず、 確認事項入力(様式2)「商工会・商工会議所を除く第三者からのアドバイスの有無」の項目で その相手方と金額の記載がない場合には、 虚偽の報告として不採択 ・交付決定取消となります。
また、不当な支援料の請求を防止する観点から、支援実施者に対して、ヒアリングや現地調査を行う場合があります。
❗注意7:「GビズIDプライム」の取得が必須です(パスワードの共有は禁止)
この補助金の申請には、GビズIDプライムのアカウントが必須です。取得していない場合は、申請準備よりも先に必ず利用登録を済ませる必要があります。
GビズIDは申請方法によって発行までの時間が異なります:
- オンライン申請の場合:最短即日で発行可能
- 郵送申請の場合:到着から原則2週間以内に審査・発行(※状況により前後)
👉 出典:GビズIDよくある質問(3-13)
🔗 GビズID公式サイト:https://gbiz-id.go.jp/top/
また、第三者の支援を受ける場合であっても、アカウントやパスワードを開示することはGビズIDの利用規約第10条に反する行為であるため注意が必要です。
❗注意8:不正受給が発覚した場合、法的な罰則があります
この補助金は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)」に基づいて実施されています。
そのため、虚偽の申請や不正な経費の計上などによって補助金を不正に受給した場合は、
- 補助金交付決定の取消
- すでに受け取った補助金の返還命令
- 不正内容の公表
- 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
といった対象となることもあります。
❗注意9:不正受給の疑いがある場合には、現地調査や厳正な対応が行われます
補助金の申請内容や経費の使い方に不自然な点がある場合、補助金事務局は必要に応じて現地調査やヒアリングを実施することがあります。
このような調査の結果、不正受給が確認された場合には、補助金の返還命令だけでなく、加算金や延滞金、さらには公的な認定・公表が行われることもあります。
実際に、中小企業庁から督促を受けるまでの間に、不正受給金額に加え、20%の加算金及び年率3%の延滞金の全額を納付しなかった不正受給認定者のみ、「不正受給認定者名」及び「所在地」を公表しています。
👉 出典:経済産業省HP「 不正受給の認定及び公表について」(2024年3月31日時点)
❗注意10:取引先に対しても調査が行われることがあります(受給者が協力依頼を行う必要あり)
補助金事業に関係する委託先や外注先などの取引先に、不明瞭な点や不審な点が確認された場合、補助金の受給者立ち合いのもとに必要に応じ現地調査等が実施されます。
この際、補助金の受給者から取引先にも協力を依頼する必要があります。
❗注意11:不正行為に加担しないことを申請時に宣誓します(違反時は加算金+返還対象)
補助金の申請書類には、以下のような不正行為に加担していないこと、今後も加担しないことを宣誓する項目があります:
- 虚偽の申請による不正受給
- 補助金の目的外利用
- 補助金額を不当に釣り上げ、関係者に報酬を配るなどの不正行為
この宣誓に違反した場合は、「小規模事業者持続化補助金<一般型>交付規程」に基づき、
- 交付決定の取消
- 補助金交付済みの場合は加算金を課した上で当該補助金の返還
を求めらます
❗注意12:「参考資料」「よくある質問(FAQ)」も必ず確認してから応募を
申請時には、公募要領だけでなく、後日公開される「参考資料」や「よくある質問(FAQ)」も必ず確認する必要があります。
これらの資料には、実務上の注意点・経費の判断基準・よくある申請ミスの具体例など、公募要領だけではカバーしきれない重要な情報が掲載されることが多くあります。
❗注意13:<創業型>との重複申請はできません
現在実施されている「小規模事業者持続化補助金<一般型>」に加えて、別枠の「<創業型>」も公募されていますが、同一事業者による重複申請はできません。
現在、持続化補助金には以下のような申請枠が用意されています(詳細はこちらの解説記事をご覧ください):
- 一般型
- 創業型
- 共同・協業型
- ビジネスコミュニティ型
❗注意14:公募要領は改定されることがあります(必ず最新版を確認)
小規模事業者持続化補助金の公募要領は、申請期間中であっても必要に応じて改定される場合があります。
そのため、書類を準備している途中で条件が変更されていることもあり得ます。
申請する際は、必ず補助金事務局の公式サイトに掲載された最新版の公募要領を確認してください。
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